警察の酷い対応 ちょっと酷い対応

酷い対応

   タクシーの運転手は、誰もが警察と何らかの関りを持ちます。当然ですが交通課とは、切っても切れないものですし、誰もが酔っ払いに悩まされます。埒が明かなくなれば、警察か交番に行くしかないのです。

   小金井警察には二度行きました。最初は新宿で乗せた酔っ払いが、中央道を走っている時に、暴れた時です。高速道路を走行中に、「課長の馬鹿野郎。」と叫び暴れるのでした。私はもちろん課長ではありません。何の関係もないわけですが、助手席と運転席の間から、私の腕を蹴ったりするのでした。高速道を走行中の行為ですので、大変危険なのは言うまでもありません。「もし事故になったら、責任をとれるのでしょうね。お客さん。」と言うと、「何を、ふざけるな。」と言いながらも止めます。ビビりながら「止めてください。」などと言うと、調子に乗って、余計に暴れたりしますので、少し強く言うのが正解です。そのお客はその後寝てしまったので、小金井警察に行き、高速上での行為があまりにも危険で、これ以上は無理なので、何とかして欲しいと訴えました。すると「あなたは、自分の仕事を放棄するつもりですか。」と、まるで、私に非があるような言いかたをされました。さすがに私はむかついたので、「ほー、すると事故って、死んだら来なさい。と、そう言うのですね。」と返すと、向こうもムッとしたのか、私を睨み付けるのでした。それを見ていた他の警察官が、まーまーと言いながら、寝ているお客を起こして、住所や電話番号を聞き、電話をすると、直ぐに家族が迎えに来ることになりました。ようするに家族は、そのお客の酒癖の悪い事を知っていて、迎えに来ることを、直ぐに承諾したという事だと思いました。今でこそ、タクシー内で暴れるのを、暴行と認識されていますけど、当時の警察の対応は、だいたいそんなものでした。

   二度目は吉祥寺で乗せた黒人のお客が、ガールフレンドを殴ってしまったと、泣きながら話し、降りた後、座席に血らしい跡があったりしたので、小金井警察に届けました。あーそうですか、と言い、私の名前と電話番号をメモして、何かあったら電話しますのでとだけ言い、血の跡などは見ようともしないのでした。本当に何もやる気はないと感じさせられました。

   この二件の話は、たまたま小金井警察だというだけかもしれませんが、実際の話なので警察署を匿名にする気はありません。しかし、こういった警察の対応が、いわゆるマル暴法やストーカー防止法などに繋がったということで、警察でも対応する法律がなく、どうしようもないという事だったのも理解出来ますが、直ぐに酔っ払いの家族に連絡するとか、少なくとも、血の跡を写真に撮るとかして欲しかったと思うのです。

ちょっと酷い対応

 新宿の歌舞伎町にいると、本当にいろいろな事があります。雨の中で、座り込んだ女の人の頭をスリッパで叩きながら、何やら叫んでいる男や、ズラッと並んだ黒服の集団など、あまり普段は見る事のない光景を、割と普通に見るのです。

 これから出勤するキャバ嬢などを乗せると、今日は誕生日だから来てくださいなどねと言い、何人もの客に電話をしたりします。その後に、明日は誕生日だからと、また何人もの客に電話をします。「毎日誕生日なんですね。」などと、私が皮肉を言ったりしても、笑いながら、「そうなんですよ。ちゃんとメモっとかないと分からなくなってしまうので、大変です。」と言ったりします。全員に同じ物をプレゼントしてもらい、一つだけ残して売ってしまうのだと、あっけらかんに話したりします。罪の意識からの告白なのか、男を手玉に取る事の自慢なのか、何人ものキャバ嬢に同じような話を聞きました。

 男のほうは、「今日キャバクラで、別れ話をしてきたんだ。」と言う人がいました。俺だけは特別で他の客とは違うんだと言っていましたが、私が知ってるキャバ嬢の話はせずに、「そうなんですか。」とだけ言っておきました。間違いなく男のほうが騙されています。

 普段は見る事のない光景の中でも、テレビのドキュメントなどで見る事のあるような、逮捕の瞬間を見た事も、数回あります。だいたいは歌舞伎町の中を流しているときです。何かの売人だと思いますが、警察官が追いかけて捕まえ、手錠を掛けたりするのを目撃するのです。もっとも、今書いているのは以前の歌舞伎町の話で、最近はかなり治安もよくなったと聞いています。最近は私は行かなくなったので、どうなのかよく分かりません。

 そんな目撃の中でも、一番印象に残っているのは、職安通りで着け待ちしていた時です。深夜一時頃です。人通りも疎らになったころに、私の車の直ぐ横で、二人の若者に二人の警察官が、職務質問していました。何を話しているのかは聞こえません。すると一人の若者が、逃げようとしました。慌てて捕まえ抑え混んでいます。それでも若者は暴れて、逃げようとしていました。それを見ていたもう一人の若者は、警察官に食って掛かっています。警察官も何やら怒鳴っていましたが、そのうちにもみ合いになりました。私の車の直ぐ横で警察官が上になってはいましたが、若者は暴れて逃げようとしていました。2~3メートル先でも全く同じような格好で警察官が必死に若者を抑え込んでいました。私のすぐ横でもみ合っている警察官と私の目が合いました。警察官は私に「応援を呼んでください。110番をしてください。」と叫ぶように言うのです。

ご協力ありがとうございました

 応援を呼んでくれと言う、警察官の要請に少しとまどうのでしたが、断る理由もないので、携帯で110番しました。オペレータと言ったらいいのか、110番の向こう側の人に、状況を伝え応援を頼まれたと言うと、「それは本当なんですね。」と疑います。「本当だから、早く応援を寄越した方がいいと思いますよ。」と言うと、「それじゃ、あなたの携帯の番号を教えてください。」と言います。私はそんな事より、早く応援を寄越した方がいいんじゃないかと思い、少しムッとしましたが、別に隠す必要もないので、番号を言いました。すると、「分かりました。それじゃ、直ぐに応援を送ります。」と言って電話を切ったのですが、「ご協力ありがとうございました。」は無いのか、などと思っていました。

電話を切ると、1分もしないで1台のパトカーが駆け付けました。さすがにこの辺りにはかなりのパトカーがパトロールしているのだと思い、これも当然かと考えていると、すぐに2台目も到着しました。その後も次々とパトカーがやってきました。あっという間に、7.8台のパトカーに私のタクシーごと囲まれてしまいました。この場所が四谷署と新宿署の境なので、両方の警察から来たのだろうと思います。身動きの出来なくなった私は、仕方なく事の成り行きを見るだけしか出来ないので、十数人の警察官に囲まれて、さすがにあきらめて連行される若者を見ていると、一人の警察官が私の所へ来て、「ここに止まってると、じゃまなので移動してください。」と言いました。警察に協力した私にその言いかたはないだろうと思い、私に応援を頼んだ警察官を見ると、格闘に疲れ切ったように座り込んだ後に、他の警察官に促されて、何の容疑か分かりませんが、容疑者の乗ったパトカーに乗り込んでいました。私の事はすっかり忘れたようでした。

私の前に止まっていたパトカーが、移動して、「すみませんが、移動してください。」と再び言われました。私が電話で応援を呼んで、警察に協力したんだと言おうかと思いましたが、その程度の事を言うのもせこく思い、仕方なく黙って移動しました。多分110番で応援を呼んだ人がいることも知らないのだろうと思います。応援を頼んだ本人が言わなければ、他の警察官は分かるわけがないのです。別に賞状をくれとは言いませんが、ここは「ご協力ありがとうございました。」じゃないの、と思うのでした。ちょと酷い対応で、忘れられない記憶ですが、この後お客さんに話す、いいネタになったのは言うまでもありません。